漢方薬の効果
ステロイドを使う病気の1つにアトピー性皮膚炎があります。
アトピー性皮膚炎は、急性期から亜急性期、慢性期へと移行していくため、長い治療期間となることも少なくありません。
ステロイドを使っても明らかな効果が出てこないときに、患者さんはこのままステロイドを使ってもよいのか悩み、漢方薬で治療をしたいと思うことがあります。
ここでは、ステロイドと漢方薬による治療の考え方の違いや、漢方薬の効果についてご紹介しましょう。
ステロイドと漢方薬による治療の考え方の違い
ステロイドには、炎症やアレルギー、免疫をおさえる働きがあります。
アトピー性皮膚炎は炎症がおこっている状態と考えられているため、皮膚の炎症をおさえるためにステロイドの塗り薬が使われています。
一方、漢方薬がアトピー性皮膚炎に用いられるときは、炎症をおさえこむという考え方ではなく、「通常の状態からずれている体の状態を通常に戻す」という考え方で使われます。
個々の患者さんの体の状態にあわせて、体の状態を通常に戻すことができるような漢方薬を選んでいきます。
ですからアトピー性皮膚炎に対して選ばれる漢方薬は、個々の患者さんによって異なるといってよいでしょう。
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患者さんの体の状態による漢方薬の使いわけ
アトピー性皮膚炎の症状は、急性期には皮膚に湿疹が密集し滲出液でジュクジュクしたりかゆくなったりするものです。
1か月ほどで滲出液が出終わり少し症状が軽くなる亜急性期に移ったとしても、さらに2~3か月で皮膚が厚くなったりガサガサしたりする症状があらわれるような慢性期に入っていきます。
この慢性期には急性期のような発作があらわれることもあります。
このようなさまざまな段階があるアトピー性皮膚炎に対して、漢方薬は患者さんの体の状態にあわせて選ばれます。
刺激物を好む人
たとえば、辛いものや脂っこいもの、刺激物などをとりすぎると、消化器系の働きをする脾胃(『ひい』:中医学で胃腸の意)が弱くなり、体の中に湿熱(不要な湿気と熱が結びついたもの)ができやすくなります。
このような人では、体の外から風が入ってくると、皮膚に風湿熱という邪気がとどまって、炎症がおこりかゆみがあらわれてきます。
このような患者さんには、消風散(しょうふうさん)や竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)を選ぶと風湿熱をとりのぞく効果があります。
アトピー中程度以上
急性期がすぎ、滲出液が出て邪気が弱まっている場合には、脾胃をよくするために、脾(『ひ』:腸の意)から湿を取り除く除湿胃苓湯(じょしついれいとう)を用います。
皮膚に熱
少し皮膚に熱が残っているなら熱と風を取り除く参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)や消風散を使います。
皮膚がかゆい
皮膚がかゆいとき、漢方でいう血がたりなくて皮膚が乾燥しているのなら当帰飲子(とうきいんし)を使って血を補ってかゆみを止めるとよいでしょう。
皮膚が熱くてかゆい
血がたりなくて皮膚に熱感があってかゆいようなときは、温清飲(うんせいいん)で血を補いながら熱をとりのぞくとよいでしょう。
このほか、漢方でいう気や陰がたりないのなら、それを補う漢方薬を使うと治療効果があらわれてきます。
このような漢方薬の使いわけは、体の状態を適切に把握し、最適の漢方薬を選ぶことができる医師や薬剤師など専門家に相談することをおすすめします。
加えて、体調を整えるため、生活に気をつけることが大切なのは言うまでもありません。
飲食物に気をつけ、睡眠を十分とり、ストレスがない生活をめざしていきましょう。
入浴時も熱い湯に入ったり長く湯につかったりすると体に熱をためこんでしまいますし、アルカリ性石けんを使うと油を抜きすぎることになりますので、気をつけたいものですね。