ステロイドパルス療法とは
ステロイド剤には内服や外用、注射などさまざまな投与方法のものがありますが、効果を早く出すために、注射で体の中にステロイドを入れることがあります。
通常飲み薬として使う量の250倍もの大量の薬を静脈の中に投与する「ステロイドパルス療法」とよばれる方法がありますので、ご紹介しましょう。
ステロイドパルス療法の投与方法
メチルプレドニゾロン
通常、メチルプレドニゾロンというステロイドを飲む場合の量は1日4~48mgです。
このメチルプレドニゾロン4mgというのは、体の中でつくられているステロイドホルモンであるヒドロコルチゾンの1日量に相当します。
ですから1日4mgを使う場合は、体の中で不足しているステロイドホルモンを補うもの、と考えるとよいでしょう。
一方、ここで紹介するステロイドパルス療法というのは、大量のメチルプレドニゾロンを点滴で静脈という血管の中に直接入れる方法です。
ステロイドパルス療法で使うメチルプレドニゾロンの量は、1日1000mgと大量ですが3日間といった短期間だけ使います。
通常飲む4mgと比べると、1日の量は250倍にもなりますので、ステロイドの効果を最大に発揮させることができる方法といえるでしょう。
成人だけではなく、小児でもたとえば30mg/kg/日といった大量のメチルプレドニゾロンを短期間用いるステロイドパルス療法が行われています。
これほど大量のステロイドを使うステロイドパルス療法は、短期間に最大の効果を得て危険な状態から助け出すために使われるもので、間質性肺炎をはじめ、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、ネフローゼ症候群 など、ステロイドのほかに適する治療法がない疾患が適応疾患です。
「特発性間質性肺炎の診断・治療ガイドライン」という間質性肺炎のガイドラインでは、「AIP(急性間質性肺炎)、IPF(特発性肺線維症)の急性増悪といった急速進行性の間質性肺炎で呼吸不全を呈する場合」に用いることが書かれています。
呼吸不全ですから肺の状態をよくすることが生きていくために重要です。
すぐにでも効果を得たい状態に使うということがわかりますね。
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ステロイドパルス療法の副作用
このようにステロイドパルス療法では大量のステロイドを用いるので、副作用が心配になってきます。
ところがステロイドパルス療法の利点とされているのが、効果はすぐに最大に出ても副作用の心配が少ないということなのです。
また、ステロイドパルス療法は短期間に大量のステロイドを点滴で体の中に入れますので、入院して行います。
入院している場合には、処方する医師だけでなく、看護師が常に目配りをしてくれています。
たとえば、看護師は、ステロイドパルス療法を行っている患者さんに対しては、副作用としてどのようなことが起こる危険性があるかをふまえて
副作用の症状…
- 食欲
- 吐き気
- 便潜血
- 吐血
- 下血
- 不眠
- 呼吸器感染症状
- 尿路感染症状
- 口渇
- 血圧上昇
などが出ていないかを確認し、医師と相談のうえ対応をする準備をしてくれているのです。
このように考えると、ステロイドパルス療法という治療は、安心して受けることができる治療といえるのではないでしょうか。
注)
間質性肺炎:肺で酸素を取り込む肺胞の壁やまわりに炎症がおこり、酸素が取り込みづらくなって息苦しくなる病気です。
全身性エリテマトーデス:自分の体の成分に対する免疫反応により、体の中のいろいろなところに発疹が見られ、発熱、倦怠感、手指の関節のはれなどがおこる病気です。
関節リウマチ:自分の体の成分に対する免疫反応により、手指や全身の関節にはれや痛みがおこり、さらに変形し、血管や肺にまで炎症がひろがる病気です。
ネフローゼ症候群:尿から大量のたんぱく質が出て、体の中のたんぱく質が少なくなり、胸やお腹に水がたまって息苦しくなる病気です。