おしりの痛みや出血が気になりだしたら、大切なのは放置しないこと。その第一段階として市販薬はとても心強い味方と言えます。しかし、市販薬を使用していても症状の改善が見られない場合には、すみやかに専門医を受診をおすすめします。何科に行けばいい?どんな診察をするの?気になる治療内容についてお話しします。

痔は何科へ行けばいいの?

おしりのトラブルは誰にでも恥ずかしいという気持ちがあるもの。しかし、日本人の3人に1人は痔であると言われているほど、国民病のような存在でもあるのです。痔は、早期に適切な処置をすれば改善できるものですが、なんとなく行きづらいからとがまんしてしまうと悪化のおそれも。

痔かな?と気になる症状が1~2週間続く、また、10日ほど市販薬を使用しても症状に変化が見られない、そんな場合には専門医に相談しましょう。特に、膿とともに高熱が出るようなケースはセルフケアが難しい状態です。また、妊娠中や授乳中の場合には、念のためまず産婦人科に相談することをおすすめします。

痔を専門的に治療するのは「肛門科」になります。内科や一般外科などでも診察可能な場合も多いですが、坐剤の処方程度になるでしょう。より専門的な処置が必要なケースもあるため、肛門科の専門医を受診するのが理想的。痔だと思っていたら別の病気だったという場合も肛門科の検査では発見できることが多いのです。完全予約制でプライバシーが配慮されていたり、女性医師が診察する女性専用デーを設けていたりと、最近ではより楽な気持ちで肛門科を受診できるようになってきています。風邪でかかりつけ医に行くくらいの気軽な気持ちで受診しましょう。





気になる「痔」の診察…どんなことをするの?

一般的に痔の診察では以下のようなことがおこなわれます。

・問診…診察前にあらかじめ記入した問診票をもとに問診をします。症状をありのまま伝えることが大切です。
・視診…肛門の外側の状態に異常がないかチェックします。
・触診…肛門付近に触れることで状態をチェックします。
・指診…肛門の中に指を入れ、腫れの具合や痛みなどを確認します。医師はゴム手袋や指サックを装着しておこないます。
・肛門鏡診…過熱滅菌された専用の器具を肛門に挿入し肛門内の観察をします。

診察台では、横向きになり膝を軽く曲げた「側臥位」の体位をとり、肛門が見える程度に下着をずらして診察を受けます。膝元にバスタオルをかける、また、指や器具の挿入時にはゼリーを使用するなど、少しでも患者がリラックスできて、痛みが少なくなるよう配慮している病院がほとんどです。肛門の奥に何らかの異常が考えられる場合には、さらに奥まで診ることができる器具を使用します。上記のような診察が終わると、身支度を整えたのちに、医師から病状や今後の治療について説明があります。

病院で受けられる治療とは?

痔は「いぼ痔」「切れ痔」「あな痔」の3つに大きく分けることができますが、痔核の位置や大きさ、腫れや痛みの度合いなど、症状は人それぞれ異なります。また、患者の生活スタイルによっても選択する治療方法がかわってくるでしょう。病院での痔の治療は、おおまかに以下の2つの方法がとられます。

保存療法

軽度とみられる痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)の場合には、外用薬の処方とともに生活習慣の指導をおこない、症状の緩和をめざします。外用薬でケアしながら、排便時のいきみや、食生活の偏り、体の冷え、運動不足など、肛門への負担となりやすい生活習慣をとり除いていくのが保存療法です。

外科的療法

痔核が常に出ている、出血が改善されない、また、膿が出ているといった段階になると、保存療法では改善が難しいため、外科的療法の必要がでてきます。切らずに治す方法と、切って治す方法(手術)とがあり、どのような治療を選ぶかは、医師とよく相談のうえに決定します。

<切らずに治す方法>

・フェノールアーモンド油注射療法…出血のある内痔核に硬化剤を注射し、痔核を硬くして出血を改善させる方法
・ゴム輪結紮療法…専用の器具で痔核をつまみ、ゴム輪で痔核の根元を縛ることで血流を止め、壊死させる方法
・ALTA療法…脱出のみられる内痔核に「硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸(ALTA)」を注射して痔核を小さくする方法

<手術で治す方法>

・結紮切除術…痔核につながる血管を縛り、出血を防いでから痔核を切除する方法です。痔核の大きさや位置などに最も柔軟に対応できる治療法で、根治性も高いとされています。

外科的療法を受けるには入院が必要?

切らない外科的療法「フェノールアーモンド油注射療法」、「ゴム輪結紮療法」、「ALTA療法」は、いずれも短時間(数分)で施術が可能なため、入院も必要ありません。また、痛みもほとんどなく完了することがほとんどです。

一方、手術で治す「結紮切除法」は、施設により日帰り手術が可能なケースもありますが、一般的には入院が必要となります。手術後には、排便時の痛みや少々の出血がみられることもあります。入院日数は、症状や術後の経過にもよりますが、数日から8日前後が一般的となっています。

痔核は、保存療法で症状が改善することはあっても、痔核そのものを無くすることはできません。また、外科的療法で痔核をとり除いても、生活習慣を改善しなければ再発するおそれもあるものです。痔の治療の根底には「生活習慣」があることを忘れないようにしましょう。